2.空也とシャイラ
『敵襲ーー!!!総長、敵襲ですーーー!!』
「ああん?敵襲だと?ホーリーフレイムの野郎、こんな敵陣のど真ん中に突っ込んできやがったのか。
いくら何でも無謀にも程があるぜ。とうとう頭がイカレタのか?」
「それは違うわ、空也。あいつ等は最初からイカれてるもの。
それに、あの性悪のジャンヌがそんな馬鹿な作戦を考えるとは思えないね。恐らく別の奴ね」
「別って・・・おいおい、キュウシュウにあいつ等以外に敵なんているかよ。
スカルを敵に回そうってんだ。よほど戦力に自信があるか、よほどの馬鹿か・・・」
「その両方じゃないの・・・へえ、もうお出ましみたい。どうやら本当に腕は立つみたいね」
「よう、邪魔するぜ。アンタが蛇王院空也だな?」
「・・・そうだ。だが、何だ。見たところお前等三人しか見えないが、もしや、たった三人でここまで来たと言うんじゃなかろうな」
「ああ?当たり前だろ。誰がそんな汚い手を使うかよ。ここまではちゃんと俺一人で闘ってきたぜ。
感謝しろよ?誰一人殺してねえんだからよ。後、兵士連中に近接戦闘で鉄砲に頼らせるのは止めさせとけ。
あれじゃ懐にもぐりこんで殴ってくださいって言ってる様なもんだからな」
「・・・ククク、アーッハッハッハッハ!!いやいや!どんな奴が来たのかと思えば、面白い奴じゃねえか!
お前、名前は何て言うんだ?是非とも戦う前に教えて欲しいもんだ」
「俺は斬真狼牙だ。さて、早速用件なんだが、お前の持ってる戦力、全部俺に貸す気はないか?
まあ、嫌だと言われても困るんだがな」
「ほう・・・俺の命ではなく、戦力ときたか。面白い。理由を聞いてもいいのか」
「構わねえよ。俺はまずあんた等の戦力を借りて、キュウシュウの戦いを終わらせるつもりだ。
ホーリーフレイムを吸収した後は、全国を統一して、日本を平和にする。まあ後のことは頭の良い連中に任せる。
それにな、キュウシュウの争いをさっさと終わらせないと、コイツが俺の女にならないんだわ」
「な!!こんな真面目な時に貴方は一体何を言っているのですか!!」
「だって事実じゃねえか。ま、そういうことだ。そんな訳で、俺に戦力を貸しちゃくれないかね」
「ククク、面白い!お前、面白過ぎだ!成る程成る程、このご時勢にこんなどうしようもない馬鹿がいたか!
ジャイラ、お前はどう思う?俺はこんな馬鹿を今まで見たことがない!気に入っちまったぜ!」
「そうねえ、空也程じゃないけど、凄い良い目をしてるよあのボーヤ。
あれ程真っ直ぐな馬鹿なら、本当に何かしでかしちゃいそうだね」
「だろう?クク、さて、狼牙とか言ったな。俺としてはお前に協力するのは吝かじゃない。
だがな、俺のこの地位と戦力は『はい、そうですか』と言って渡せるものでもねえんだよ。
分かるだろう?俺の言いたいことが。総長の立場は自分より弱い人間には渡せん」
「ヘッ、当たり前だろ。何も知らねえ相手にそっくり戦力を明け渡す馬鹿なんざ、こっちから願い下げだ!
御託はどうでもいい。体裁なんかどうでもいい。やり合おうぜ、蛇王院空也。
アンタとは前から一度闘ってみたかったんだよ。恐らく、タイマンならアンタが全国で一番強い総長だろうからな」
「フフ、嬉しいこと言ってくれるじゃねえか!益々お前を気に入っちまった!シャイラ!手を出すなよ!
斬真狼牙はこの蛇王院空也が仕留める!!」
「手なんか出さないよ。アタシもちょっと斬真狼牙のツレの実力の程を知りたいからね。
さあ、私達もやりあおうじゃない。どっちが来るのかしら?」
「美潮、下がってろ。アイツは私が相手をする。
私達は気にせずに、その目にしっかりと斬真狼牙の戦いを目に焼き付けろ。
お前が女として一生をかけて愛するに相応しい男かどうか、その目でな」
「久那妓さん・・・」
「さて、それじゃやるとするかい。かかってきな!斬真狼牙!!」
「言われるまでもねえ!!行くぜ、蛇王院空也!!」
・・・
「グゥッ!!」
「へへ・・・悪いが、チェックメイトだ。俺の勝ちだな、蛇王院空也。
流石はスカルの総長だ。久々に本気でいかせてもらったぜ」
「フフ・・・見事だ、狼牙。この俺が手も足も出ないとは・・・益々お前に惚れちまったぜ」
「・・・オイ、悪いが俺にそっちの趣味はねえからな」
「当たり前だ。俺だってねえよ。シャイラ!そっちはどうだ!?」
「聞かれるまでもないよ・・・空也が闘い終わるずっと前に完敗だよ。
手も足も出ないどころか、一歩も動けなかったなんて、自信喪失しちゃいそうだ」
「クク、ウチの番長のシャイラも勝てねえ女、か。
お前等、本当に面白過ぎだ。お前等なら、キュウシュウを・・・日本をどうにか出来るかもしれんな」
「ヘッ・・・言われるまでもねえよ。それじゃ約束だ。俺達に戦力を貸してくれ。
ホーリーフレイムを抑える為にも、あんた等の戦力が必要だ。無論、アンタ等二人も含めてな」
「オイオイ・・・俺達の戦力だけならまだしも、俺ら二人までお望みかい。
そりゃちょっと欲張り過ぎってもんじゃないのか?」
「別に構わねえだろ?それに俺と来れば、今よりずっと面白いモンを見せてやるぜ?
それにな、打算もあるんだよ。アンタ等二人じゃないと、ホーリーフレイムの騎士団の頭共は抑えられねえからな」
「そうかい・・・ちょっと待ってな。シャイラ、どうする?」
「アタシは空也の決めた道を一緒に歩くだけさ。きっと他の連中も同じことを言う筈だよ」
「分かった。・・・狼牙、俺達で良ければお前と一緒に連れてってくれ。
お前の作る、新しい世界ってモンに興味が沸いた。もう、連合の奴等に良い様に使われるのもご免だからな。
あいつ等と違って俺達は異国人迫害なんぞ興味は無い。俺達が望むのは俺達が楽しく笑って過ごせる世界だ。
お前なら、そういう世界が作れるかもしれん。信じていいんだな、斬真狼牙」
「ああ、任せとけ。お前等が力を貸してくれるんだ。負ける理由がねえよ」
「・・・へえ、斬真狼牙、ね。空也程じゃないけど、良い男を見つけたもんだね、お嬢ちゃん」
「・・・え?へ!?わ、私ですか!?」
「私の目の前にアンタ以外誰がいるって言うんだ。
大事にしなよ。あれ程の男は滅多にお目にかかれないからね。あの男は何があってもアンタを守ってくれるよ」
「あ・・・あう・・・」
「さて・・・と。美潮、俺の戦いを見てどうだった?俺はお前に値する男だったか?
・・・って、どうしたんだお前。顔真っ赤じゃねえか」
「なななっ、何でもないです!!放っておいて下さい!!」
「はぁ?何だ、それ?変な奴だな・・・」
「フフ・・・斬真狼牙、ね。なかなか面白くなりそうじゃない。
さて、これからホーリーフレイムの連中はどう動くかねえ・・・」