5.五十嵐紅美
「ほう・・・アンタが噂の斬真狼牙かい。なかなかええ面構えしとるやないか。
あの蛇王院を倒したっちゅうのも嘘って訳じゃなさそうやな」
「そうかい、ありがとよ。まあ、そんなことはどうでもいい。
今日はアンタに話があって来たんだよ。征嵐学園番長、五十嵐紅美」
「何や、落ち着きがないな。まあ、ええわ。ウチも茶を飲みながら話・・・なんて硬っ苦しいのは苦手やさかいな。
さっさと言ってみ。ウチにとって面白い内容やったら全部聞いたる」
「そうだな、なかなか面白い話だと思うぜ?
単刀直入に言うが、今から俺達はホーリーフレイムを叩く。それにアンタも一枚噛んで欲しい」
「・・・成る程、ホーリーフレイムの連中をね。まあ、あいつ等は日本人皆殺しを掲げた過激なカルト集団やからな。
そら、ウチのボスもホーリーフレイムが残るよりはアンタ等が残った方が喜ぶやろうな。
けどな、それは無理な話や。護国院はキュウシュウの争いには参加せえへん。それがルールや」
「おいおい、話はちゃんと聞けよ。俺は護国院なんざに力を借りようとは言ってねえ。
五十嵐紅美、アンタの力を貸して欲しいって言ってるんだよ」
「・・・話、続けてみ」
「続けるも何も、それだけさ。俺達がNAGASAKIに攻め込む前に、あんた等は熊元にちょっかいかけるだけでいい。
防衛ラインが分散された隙を突いて俺達がジャンヌとか言ったか?頭をブッ飛ばして終わりだ。
アンタ等は熊元で適当に暴れてくれるだけでいいんだ」
「例え、やることになったとしよか。それで、ウチ等に何のメリットがあるんや。
もしアンタ等が負けたら、ウチ等はホーリーフレイムと護国院に挟み撃ちや。
それこそ、香辺が終わってまうやろ。そんな危険な賭けにウチが乗ると思うか?」
「乗るだろ、アンタなら」
「・・・あのなあ、何を根拠に言うんや」
「だって、アンタさっきからずっと笑ってんじゃねえか。
『俺達の世界』で借りがあるホーリーフレイムをぶっ潰すってオーラ出まくってるぜ」
「フ・・・アハハハハハッ!!なんや、気付いとったんか!おもろないなあ!!
折角アンタの困った顔が見れると思ったのに、当てが外れてもうたわ」
「・・・ったく、相変わらず良い性格してるぜ、五十嵐さんよ。久しぶりだな」
「ああ・・・つっても、大して日数経ってへんけどな。
アンタがスカル潰したって情報は全国に回っとるよ。まさかコッチでも大暴れするとはアンタも相変わらずやなあ」
「ヘッ、こんな面白い状況なんだ。大人しくしてられっかよ。
それじゃ五十嵐、今回の件は了承してくれんだな?」
「当たり前や。ホーリーフレイムの奴等にはアンタの言う通り香辺落とされた借りがあるからな。
それに、こっちの世界もどうせ真宿の穴を塞がな何も出来へんやろうし。
あの化物倒し終わるまであんた等に協力させてもらうで」
「そうか、そりゃありがたいが・・・大丈夫なのか、護国院に目を付けられるだろ?」
「ああ、構わへんよ。うち等は護国院を良く思ってへん人間しかおらんからな。
それに狼牙軍団の一部になれば、向こうもそう簡単に香辺には手出し出来へん。
ま、あんた等と組むっちゅうんはこっちにも思惑があるっちゅうことや。
だから安心し。少なくともアンタが海外に行くまではウチ等は変な行動おこさへんさかい」
「それを聞いて安心したぜ。アンタが力になってくれるとなれば、心強いからな。
それじゃ、NAGASAKIを攻める際は頼んだぜ、五十嵐」
「それはいいんやが、別にウチ等が先にホーリーフレイムの連中を叩いても構わんのやろ?」
「当たり前だ。どっちがホーリーフレイムを落としても恨みっこ無しでいこうぜ」
「それを聞いて安心したわ。それじゃ攻める日が決まったら連絡してくれな」
「ああ、分かった。・・・っと、五十嵐、最後に一つ聞かせてくれ。
香辺や護国院の連中で向こうの記憶があるのはお前だけか?」
「・・・そやな、色々嗅ぎ回ってみたが、今んところウチだけや。
向こうで狼牙軍団におった連中、柴崎もベンケイも覚えてへんかったわ」
「そうか・・・分かった、情報サンキューな」
「何、これくらいは構わへんよ。それじゃあ当日を楽しみにしとるで」
・・・
「あ・・・お帰りなさい、狼牙。香辺との話し合いはどうでしたか?」
「おう、バッチリだぜ美潮。ホーリーフレイムとの争いだけじゃなく、それ以降の同盟も組んできた。
これも全部お前の出した作戦のおかげだ」
「いえ、そんなことは・・・」
「謙遜するな、美潮。狼牙の言う通り、お前の意見が無ければ香辺と組むなど考えもしなかったからな。
褒められた時は素直に喜ぶべきだ。・・・なんだ、狼牙。その馬鹿みたいな顔は」
「い、いや・・・久那妓の口からそんな言葉が出るとは思わなかったからな・・・って誰が馬鹿だコラ!!」
「馬鹿とは言っていない。馬鹿みたいな顔をしていると言ったんだ」
「大して変わんねえじゃねえか!!」
「あ、争いは駄目ですっ!ケンカなんかしちゃ駄目ですっ!お願いですから、あの、その・・・」
「止めても無駄ですよ、マリーシア。はあ・・・早く帰らないと色々と拙いと思うんですけど・・・」
「み、美潮・・・二人を止めようよお・・・」