ピューと吹く!それ散る
クリスマスイブ、舞人の部屋にて――
舞人「・・・山彦の奴遅いなあ・・・今日はクリスマスイブだから
山彦が俺を慰撫してくれるイベントが発生するはずなんだけどなあ・・・
はあ・・・こだまさんは俺のこと忘れるし、これで山彦が来なかった(BadEnd)ら俺どうすればいいんだよ・・・ん」
こだま「どうしたの桜井君、そんな浮かない顔して。先輩に話してみなさい」
舞人「こ・・・こここ・・・こだまさんが登場したーーー!!!
もしもしユーザーサポートセンターですか!?このゲームバグ起こしてるんですけど!」
こだま「きゃああああ!?ちょ、ちょっと待って!!落ち着いてって!!!」
舞人「ごめんなさい・・・六月頃『何でひかり姐さんルートじゃなくて子供先輩ルートなんだよ』とか
言ってたせいでしょうか?ホントごめんなさい・・・」
こだま「いやいやそうじゃ・・・子供先輩!?何さりげなく失礼なこと言ってるの!?
落ち着いてよ桜井君、別にゲームのバグで出てきた訳じゃないんだよ。
こうなるのは最初から決まったことで私自身も記憶を失ってないんだよ。
それに『こだま先輩』っていうけどそれは前までの話だよ」
舞人「ま、前までの話・・・?」
こだま「うん。もうこの辺じゃ『憑依合体桜香INこだま記憶取り戻しバージョン』で通ってるから」
舞人「憑依合体!?」
こだま「いや、もう通ってたっていうのが正解かな。
今時の人は『Fate』や『ひぐらし』が主流で『それ散る』なんか興味無いから・・・」
舞人「そ、そうなんスか・・・いや、そういうことなら安心出来ないけどとりあえず安心しました・・・
今日はどうもありがとうございました。また来年の春に逢いましょう、本が舞うあの部屋で」
こだま「いや、そんな露骨に帰そうとしないでよ・・・お互いこれから春まで出番無し同士じゃない、仲良くしようよ」
舞人「いや俺出番ありますよ!!主人公だし!!それに今から俺は山彦の奴と出かけるんですから!」
こだま「相良君なら今日は来ないよ。慰撫しに行ってるから」
舞人「え!?慰撫って俺まだされてないんですけど・・・」
こだま「あはは、やだなあ!桜井君と違って相良君は異性のお友達沢山居るんだよ?
そして折角のクリスマスイブだよ?本当に何も知らないんだね桜井君は」
舞人「う・・・嘘・・・まさか俺を放っておいて女を慰撫しに行ったのか!?
女友達の多い奴だけど親友キャラとしてそれだけはないと思ってたのに・・・!!
あの典型的な『女好きだけどいざと言う時は必ず友情を取るタイプ』の山彦が・・・」
その頃の山彦
山彦「ん?今何か聞こえたような・・・」
麦兵衛「気のせいですよ。それより聞いてくださいよ・・・俺、本当に小町さんのこと好きだったんですよ・・・でも・・・」
山彦「ああ、聞いてるって。それより何か忘れてるような・・・慰撫する相手間違えてるような・・・」
麦兵衛「俺は彼女の笑顔が見たかったんだ・・・彼女が幸せならそれで良かったんだ・・・」
舞人「・・・なんか、どっぷり落ち込んできた・・・もうやり直して希望シナリオ行こうかな・・・」
こだま「まあまあ座ろうよ。もう今日は私と過ごそう?
私こう見えても面白い話沢山持ってるんだよ?こたつにでも入ってさ」
舞人(ああ〜勝手に元彼氏の部屋のコタツに入っちゃったよこの人・・・もうなんでもいいよ・・・)
こだま「まあまあ元気出してよ!私なんか桜井君に会うまで一度も彼氏出来なかったんだよ?」
舞人「そ、そうなんですか・・・?」
こだま「そうだよ桜井君、ずーーーっと一人だったんだよ?ずーーーっと一人で本読んでたよ1(ぴー)年間。
でも全然いいよ。気楽だもん。本があれば恋人なんていらないもん。
もうみんなが恋愛に興味持つ年頃に本ばかり読んでたからね。
そりゃもう絵本の世界に憧れてたから白い目で見られたよ。
弟にも馬鹿にされたし。最初は絵本ばかり読んでたんだけどあんまりひかりが怒るからね。
もっと大人みたいな本を読もうと思ったわけ。それで文芸部入ったんだよー」
舞人「・・・・」
こだま「そしたらまあ変な年下の男の子に捕まっちゃってね。
それでまあ・・・大好きな人のこと忘れちゃうような悲惨な恋愛しちゃったんだけど・・・」
舞人(・・・元気でねえ〜・・・・・)
こだま「まあこれから幸せになろうっていう志半ばでね。彼氏の方だけ記憶も半ば残っちゃってね」
舞人(いや今のアンタ明らかに記憶残ってるよ・・・)
こだま「何かこうやって話すと悲惨な感じだけどね。でもぜーんぜん!私悩みとかなくて本当に楽しかったよ〜!」
舞人「そ、そうですか・・・」
こだま「あれ?まだ元気出ないの?ったく、しょうがないなあ桜井君はウジウジしちゃって・・・」
舞人(あんたのせいだよ・・・)
こだま「ホント私の彼氏にそっくりだよー!」
舞人(だからそれがヘコむっつぅんだよー−−!!!!)
舞人「いやあ・・・あの、そっくりっていうか本人なんすけど・・・」
こだま「あはは!だからそっくりだってば!私の彼も私が記憶取り戻すまではそんな感じだったらしいんだもの!
だから桜井君も早く見つけてほしいんだよね・・・彼にとっての私みたいな存在を・・・」
舞人「だ・・・大丈夫ですよ。俺にはこだまさんがいますから・・・」
こだま「いやーこだまじゃないよ。桜井君はやっぱ希望ちゃんか小町ちゃんだよ!人気二人とも高いし!」
舞人(な・・・何言い出したんだこのアマはーーー!!!!)
こだま「だって桜井君正直こだまのこと好きじゃないでしょ?
それはただひかりがクリア出来ないから意地張ってるだけだよ」
舞人「そ・・・そんなことないですよ!!
そりゃこだま先輩シナリオに行ったきっかけはひかり姐さん攻略したかったからだけど
今は本当にこだまさんが大好きですから!!」
こだま「まあまあ・・・そんなカッカしないで」
舞人(だからアンタのせいだろ全部!!くそ・・・何だよこの状況・・・
何で俺傷心気分のクリスマスにこだまさんのバグに説教されなきゃなんねーんだ・・・)
こだま「・・・あのね、桜井君。これだけは聞いてて欲しいんだ。
私ね、小さい頃から男の子に興味はあったんだけど本格的に恋したのは(ぴー)(ぴー)年生のときなんだ。
それまでの(どきゅーん)年間がね、とてもからっぽなんだ・・・」
舞人「・・・こだま、さん」
こだま「いい、よく聞いてね。私、柄にもなく大事な事言うね。
『自分の…』あ、作者さん?え、終わり?ホントに?これから課題しなきゃいけない?そんなあ・・・」
こだま帰宅。
舞人「・・・メリー・クリスマス・・・」(がびーん)
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